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しゃれ しゃれ puns | ||||||||||||||||
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——『黒執事』[上]2巻70ページ・[下]1巻176〜177ページ (枢やな/スクウェア・エニックス Gファンタジーコミックス) |
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しゃれは、「同じ音」や「似た音」を利用して、1つの表現の中に二重の意味をこめて使うものです。 |
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「しゃれ」を使うことによる、いちばんのメリット。それは、相手の使ってきたコトバのコトバじりをとらえて、そのコトバをはぐらかすことによって無効化してしまう、というところにあります。 | |||||
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「しゃれ」は、ことば遊びの一種です。ですので、その場の流れに応じて「しゃれ」を使うことによって、相手を楽しませたり笑わせたりすることができます。 | |||||
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すぐ上の項目![]() |
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ちょっとした「しゃれ」を使うことが、日ごろの生活を円滑にするのに役に立つはずです。『ことば遊び(中公新書 418)』(鈴木棠三/中央公論社)によれば、『しゃれを愛するのは日本人の国民性』だとのことです。 | |||||
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実際に使われている言いまわしには、1通りの表現しかがない。それにもかかわらず、その1通りの表現の中から、「音が似ている」もしくは「音が同じ」だったりすることによって、2通りの表現が連想できてしまう。基本的に「しゃれ」は、この原理を使ってつくられます。 | |||||
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もちろん、なじみ薄い人に対して「しゃれ」を言うのは、やめておくほうがいいでしょう。場合によっては、相手をバカにしたと受けとられかねません。 | |||||
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「しゃれ」は、面白くない使いかたをすることで「駄洒落」になりがちです。ですので「しゃれ」を使いこなすためには、「すべらない」ことが大事です。とはいっても、「すべらないしゃれ」をシーンに即して言うのは難しいものですが。 | |||||
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引用は、『黒執事』の1巻と2巻からです。 アニメの『黒執事』第2期放送を見ていたら、ここであげるフレーズが個人的にとても気になりました。ですので、これを例文としてあげておきます。 この物語の主人公は、 「黒執事」こと、セバスチャン。そして、その主人で伯爵のシエル・ファントムハイヴ。 引用したシーンで登場しているのは、執事のセバスチャン。彼は、ふつうの人間からかけ離れてた能力を持っている。知識・品位・料理・武術などなど、すべてにおいて完璧。 しかも執事のセバスチャンは、単なる「完璧な人間」でさえない。じつはセバスチャンの正体は、「悪魔」だったのだ。 セバスチャンはとある理由により、「悪魔」でありながら、ファントムハイヴ家に仕えることになった。そのためセバスチャンは、謙遜と皮肉を込めて時々、口に出す。 あくまで(飽く迄)、執事ですからと。 このフレーズは一見すると、執事である自分を遠慮がちに表現しているようにも思える。しかし、このフレーズは、もう1つ別の意味を持っている。それは、 悪魔で、執事ですからというもの。 といったわけで、この例では同じ音であることを利用して、ことばに二重性を持たせています。ですので、ここで使われているレトリックは「しゃれ」だといます。 |
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もう1つ、別の例を引用してみます。
右の引用は、短編「恋しチャイナ!」(『タイホしてみ〜な!』3巻所収)。 この「恋しチャイナ」というコトバも、「しゃれ」の例としておきます。 一応、この作品のおおまかな流れを書くと、つぎのようになります。 主人公の「甘里」は、中華料理店で働いている女の子。上のイラストの右に描いてあるのが、「甘里」です。 その中華料理店に、かっこいい男の子がやってくる。彼の名前は「一哉」。「甘里」の向かいにある中華料理店の息子だという。 …とまあ、そんなふうに話は進んでいきますが、「しゃれ」というレトリックとして重要な点は、
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「しゃれ」は、「ことば遊び」の代表的なものです。 そのほかにある「ことば遊び」のレトリックとして、リストとしてつぎのようなものをあげてきます。
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「しゃれ」と「駄洒落」とは、どこに違いがあるのか。じつは、ハッキリとした線引きはありません。どこから「しゃれ」で、どこからが「駄洒落」なのかといったことが誰にも分かるような基準というものはありません。 ですが、いちおう。「しゃれ」のほうは、
このあたりの、さらにくわしいことについては、 『落語のレトリック—落語の言語学シリーズ2—(平凡社選書 165)』(野村雅昭/平凡社)の「第五章」(の最後のほう)に書かれています。 |
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このページで扱っている、「しゃれ」。 この「しゃれ」が真面目な方向に進むと、「重義法」と近くなります。ですがこの「しゃれ」の多くは、笑いやユーモアをねらったものです。 また「しゃれ」は、「1つのことばに2つの意味を持たせる」ということになります。ですので、「異義兼用」の一種とみることができます。 こういった、隣接したレトリック用語との比較については、 『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)に細かく論じられています。 |
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説明が長くなるので、はじめに結論を書いておきます。 日本語に、「しゃれ」「駄洒落」が多い理由。それは、 日本語は「音節」の数が、すごく少ない。というものです。上に書いたことを、最後のほうから逆に書いていくと、 日本語には「しゃれ」「駄洒落」が多い。ということになります。 |
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で。まず、はじめに。 ある専門用語を1つ、説明しておく必要があります。それは、「音節」という専門用語です。 そんなの知っている、という方は、 ![]() ![]() さて。 この ![]() ![]() そういったわけで、「音節」の説明をスタートします。 まず。日本語だけを考えれば、 1つの「音節」は、1つの「ひらがな」「カタカナ」であらわすことができるといえます。たとえば「ナイフ」であれば。その上で、「ナ・イ・フ」といったぐあいに、カタカナごとに区切る。すると、「ナイフ」は3つの「カタカナ」になる。なので、「ナイフ」は3つの「音節」がある。そういうふうに分けることのできる1つのカタマリ、それが「音節」です。 まあ。 この「ひらがな」「カタカナ」1つに対して、1つの「音節」というルール。残念ながら、これには例外があります。「きゃ」「しゅ」についている、小さな「ゃ」「ゅ」「ょ」のようなもの。これは、1文字では「音節」になることができません。「きゃ」とか「ひゅ」のように、大きな文字とペアになって、はじめて1つの「音節」になります。 今までのことをまとめると。ちょっと抽象的な定義になるのですが、 ことばを使っている人が、1つずつの区切りと考えるカタマリ。これが、「音節」です。 先ほど書いた、小さな「ゃ」「ゅ」「ょ」について確認しておくと。「きゃ」という音のカタマリを、「き」と(小さい)「ゃ」に分けることはできません。「きゃ」というコンビで、「1つのまとまり」だと受けとると思います。そういったわけで、「きゃ」「しゅ」みたいなものは2文字でもって、1つの「音節」をつくることになります。 そして、その「音節」というものを、よく見る。すると。「1つのカタマリ」と受けとっているもの。つまり「音節」には、必ず「1つ(以上)の母音」を持っている、というルールがあるのです。日本語でいえば、
ここまでくると。「ナゼ、ここまで細かいことを説明をしているのか?」と、フシギに思うかもしれません。ここで、「音節」の説明を長々と書く理由。それは、ここから先で「外国語の音節」についての説明が求められるからです。 「外国語の音節」は、「日本語の音節」に比べて、どのような違いがあるのか。まさか、地球にある言語ぜんぶを1つ1つ調べるわけにもいかないので。ここでは「英語」に限定して考えてみます。 ここで出してくる英語の例として。“knife”という英単語で考えてみます。 カンのいい人は、すぐに分かったと思いますが。この“knife”と比べるために、わざわざ日本語の例として、「ナイフ」を出したのです。 さて。“kinfe”のの発音を見てみると、/náif/となります。 そして、この“kinfe”の発音/náif/を「音節」で区切ってみようとすると。おどろくなかれ、この/náif/は全部で1つの「音節」なのです。発音を細かく調べると、/n(子音)+ái(二重母音)+f(子音)/となります。 上に書いたように、 「1つ(以上)の母音」が「いくつかの子音」を連れて、1つのカタマリになったもの。それが「音節」です。/náif/は、母音の/ái/が、子音の/n/と/f/といっしょ出てきています。なので「音節」としては、これ以上分けることができないです。 この[2]で確認しておきたいこと。それは、 ということです。 |
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で。やっと、はなしのメインに入ります。 世のなかでは、ふつう。 日本語には「しゃれ」とか「駄洒落」が多い。ということになっているみたいです。だれが、どのようにして「日本語には多い」ことを調べたのか、それは分からないのですが。日本語には「しゃれ」「駄洒落」が、いっぱいある。そういうことになっているみたいです それではナゼ、日本語には「しゃれ」「駄洒落」が多いのか。その理由として、よく言われるのが 日本語には、たくさんの「同じ音」「似た音」をしたことばがあるというものです。つまり、「貴社の記者が汽車で帰社する」みたいな、「同じ発音」をしたり「似た発音」をするものが多い。という理由です。 |
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なのですが。 この説明では、いささか不十分です。どうしてかというと、ポイントとなるのは、 日本語には、ナゼ「同じ音」「似た音」のことばが多いのかというところにあるからです。 じゃあ、なんで日本語には「同じ音」「似た音」がおおいのか。その理由は、 日本語には、「音節」の数が少ないというものです。 ここで、やっと「音節」という用語が登場しました。 「多い」とか「少ない」とかの、そういった話をしているので。まず、日本語には「音節」がいくつあるのか。そっちを確認しておきます。実際のところ日本語は、いくつの「音節」を持っているのか。 日本語の「音節」がいくつなのか、という厳密な数を書くことはできません。それは、(困ったことに)学者によって意見が分かれていたりするからです。けれども日本語にある「音節」の数は、[日本語にある「ひらがな」の数 + 「しゃ」「ちゃ」みたいなものの 合計]で、ある程度の見当はつきます。おおまかに言えば、「100個よりは、ちょっと多い」くらいです。 さて、これに対して。 たとえば「英語」の持っている「音節」の数は、どのくらいなのか。その厳密な数は、こちらも書くことができません。どうしてかというと、あまりに多すぎるのです。たとえば「4000」とか(井上ひさし)、「30000以上」(楳垣実)とか、いろんな説があります。しかし、たしかな数を書くことはできません。ここでは(英語の「音節」の種類が多いほうが、説明の都合がいいので)「30000以上」ということにしておきます。 まあ、あいまいなのは「どっちもどっち」といったところです。けれど、ここでは「音節」がどのくらいあるのか。その「だいたいの数」が分かれば、じゅうぶんに話を進めることができるので問題ありません。 で、その「あいまいな数」というのを比べてみると。 日本語=100ちょっと VS 英語=3万以上ということなので。あきらかに、日本語のほうが「音節」が少ない。少ないということは、(好むと好まざるとにかかわらず)同じだったり似たりした「音節」を持っている単語が、どうしても生まれやすい。 ではその言語に、同じだったり似たりしている「音節」を持っている単語が、いっぱいあるということ。それはつまり、「しゃれ」「駄洒落」を作りやすいということになります。 以下では、ちょっとした例をあげて、考えてみます。もちろん、ことばには数学の授業で習うような確率論を当てはめることはできません。たとえば、「同じ発音」となりそうな単語が2つあったばあい。どちらかを言いかえることで、ダブることを避けるとか(=「同音衝突」)。 なのですが、ここでは中学や高校で習うようなレベルの確率論で考えることにします。なぜなら、ここを書いている私(サイト作成者)のアタマでは、これより難しいことが書けないからです。 たとえば。ここに、1つのスロットマシンがあるとします。1つは「日本語・スロットマシン」で、もう1つは「英語・スロットマシン」という名前がついています。どちらのスロットマシンも、3つのリール(回転するところ)があります。 「日本語・スロットマシン」は、100回に1回の割合で「7(セブン)」が出ます。ですが、「英語・スロットマシン」は、3万回に1回の割合で「7(セブン)」が出ます。そして、3つのリールが全部「7(セブン)」だったときが「大当たり」となるとします。 この条件で、「日本語・スロットマシン」で「大当たり」になる確率を考えてみると、 「100の3乗」=「100万」 回につき1回ずつ、「大当たり」がでるです。これに対して、「英語・スロットマシン」で「大当たり」になる確率を考えてみると、 「30000の3乗」=「27兆」 回につき1回ずつ、「大当たり」が出るというわけでして。「英語・スロットマシン」はサギだと思うくらい当たりません。これにくらべて「日本語・スロットマシン」は、もしかしたら当たるかもしれません。 ここで書いたような、スロットマシンが「大当たり」になる確率。これは、3つの「音節」をもった単語が、偶然まったく同じ発音になる。その確率を考えているのと、同じことです。かなり、キメが粗い計算なのですが。 そういったわけで。 「音節」の数が「多い」のか「少ない」のか。それが、「しゃれ」「駄洒落」を作るときのキーポイントとなる。日本語では「音節」が少ない。英語が持っている「音節」の数は、日本語よりは多い。それも、かなりの差がある。そのようなことを、理解していただけたと思います。 もういちど、結論をくり返すと。 日本語に「しゃれ」「駄洒落」が多いのは、日本語が持っている「音節」の種類が少ないからなのです。 |
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これからの課題として。 まず課題となりそうこと。それは、上に書いた確率の計算が、やたらと初歩的だということでしょう。かといって、いまさら高校の数学を勉強するのも、かなりマヌケだし…。まあ、ほかのサイトに任せることにしましょう。 あと。上に書いた計算は、あくまで「同じもの」が重なる確率についてだけしか考えていない、ということです。つまり、「似た音」については、まったく考えに入れていないということです。このように、「同じ音」だけしか見ないで、「似た音」を含めていない理由。それは、 人間が「似た音」だと感じるのは、どのくらい近い発音のときなのかというのが、イマイチ分からないからです。 このあたりについて書かれている本としては、
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しゃれ・洒落 | |||
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地口・もじり | |||
※このサイトで「しゃれ」という名前で扱っているものが、「地口」という名前で呼ばれていることもあります。 |
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このページでは、「puns」に対して「しゃれ」という訳を与えました。ですが、西洋修辞学での「puns」というのは、じつはちょっと違います。それは、「puns」の具体例を見ればわかります。
たしかに、日本語では「掛詞」のような「1単語で2つの意味」といった表現ができます。しかし、ヨーロッパの言語ではそのような表現は、非常に難しいものです(ゼロというわけではないかれど)。 ですので、 上に挙げた英語の例文のような表現を、英語では「puns」とよぶ。そして、日本語では「しゃれ」と呼ぶのがふつうになっています。 なお、上に書いた日本語訳「(いつもうそをついていた人、ここに眠る)」。これをいくら読んでも、「しゃれ」らしい感じがしません。これは、音が同じだったり似ていたりすることを利用した「ことば遊び」は、翻訳することが非常に難しいということに原因があります。 |
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ダブルミーニング、同時的音喩、ことば遊び、空言(そらごと)、重義法、地口、秀句法、雙叙法、掛けことば、駄洒落、打ち返し、語路合わせ、早口ことば、なぞかけ、文字鎖・しりとり、類喩、数装法、異分析、アクロスティック、メソスティック | |||
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「しゃれ」という用語の語源や歴史については、鈴木棠三氏の執筆した本が抜きんでています。この本であるとか、ほかに『新版ことば遊び辞典』(鈴木棠三[編]/東京堂出版) もおすすめです。 | |||
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この本には「洒落」と「地口」の項目が、それぞれあります。ですので、2つの項目を両方とも合わせて参考になるのではないかと思います。(じつは、どこで「洒落」と「地口」とを区別するかということは、イマイチはっきりしません) | |||
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本のタイトルがあらわしているように、この本は「落語で使われるレトリック」について書かれてます。そして、その第5章には、「シャレ」というタイトルがついています。この章ではかなりの紙面を割いて、「しゃれ」について書かれています。 | |||
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