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屈折反復 くっせつはんぷく polyptoton | |||||||||||||
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——『美!!』1巻27ページ (織田綺/小学館 小コミフラワーコミックス) |
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屈折反復は、同じことばが「活用」などをしてかたちを変えながら、何度も出てくるというレトリックです。 ここでくり返されることばは、たしかに単語としては1種類ものです。けれども、その単語が「活用」など(=「屈折」)することによって、多少すがたが変わっている。それが「屈折反復」です。 | |||||
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同じような音をくり返すことによって、ことば遊びを作ることができます。 | |||||
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語勢をテンポ良く返ることで、リズミカルな調子を生みだします。 | |||||
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単語の終わりで「屈折」するのが、ふつうです。つまり、単語の先頭は「屈折」では変わりません。このことを使って、頭韻を作り出すことができます | |||||
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(活用などの)「屈折」ができる品詞を「屈折」させながら、何回も重ねて表現する・それが。これによって「屈折反復」を作ることができます。 | |||||
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引用は、『美!!』の1巻から。 高校への新入生、竹林真という女の子が主人公。 この新しく入った高校には、美(ビューティー)研究部という部活があった。通称は、美研。 しかしこの美研は、校内でだれもがおそれるような、とってもアブナイものだった。その部長である美堂陽をはじめとして、メンバーがあやしい。ひとくせもふたくせも、もしくはそれ以上あるような、個性あふれる部員がそろっていた。 しかし新1年生の真は、ひょんなことから美研に入ることをさそわれていた。というか、部長の陽に会ったときから「ひと目ぼれ」されたらしく、もうれつにアタックされていた。 そんななか。 こんかいのシーンは、新入生たちに部活を紹介するというもの。美研を説明するために、美研の部長をやっている陽がとうぜん出てくる。しかし、真はその登場をとってもおそれている。そこで、ひとりおびえているのが引用の場面です。 見ない見ちゃダメ見たら死ぬとまあ、すごい怖れかたです。「誇張法」とはいえ、「見たら死ぬ」という言いかたはふつうでありません。もちろん、かりに見たとしても死にません。 で。 ここで注目してみると、何回も「見る」ということばが出てきます。そして、その「見る」ということばは、「活用」して変化しながらならべられています。ですので、この表現を「屈折反復」として考えることができます。 「活用」しているということは、ことばのかたちが変わっているということです。未然形とか連用形とか、そういうやつです。 ねんのため確認しておくと、つぎのようになります。 まあ、文法を勉強したのなんて学生時代のことだから忘れたと、そういうかたもいるでしょう。そういった読者にとっては、目の健康にさしさわりがありますので見ないほうがいいです。あくまで、しっかりと確認しておかないと気がすまないというかたのためのものです。 となります。ポイントは、「見る」という単語の活用形です。つまり、この文に含まれている「見る」ということばには、2とおりの活用形がある。ひとつは、未然形。もうひとつは、連用形。 このように、単語が「活用」しながら何度もあらわれるレトリックが、「屈折反復」です |
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この「屈折反復」というレトリック用語で使われている「屈折」。じつは、反復されることばは、「活用」しているものだけではありません。「活用」だけでなく「曲用」についても含めます。そのため、この「活用」と「曲用」とをあわせた「屈折」という用語を使って定義することになります。ですので、「屈折反復」といういいかたをします。 ですが日本語で「屈折」というのは、「活用」しかありません。つまり日本語には、「曲用」がないのです。細かくいうと日本語には、動詞・形容詞・形容動詞と助動詞の「活用」以外には「屈折」することのないのです。 そういったわけで。 厳密に考えることをしなければ「屈折反復」とは、「活用」によって変化しながらのくり返しといえます。外国語についてをアタマから外しておけば、そのように考えておいてかまいません。 なお、「屈折」とか「曲用」とかについての文法上の知識については、下のほうにまとめておきました、そちらも、あわせてごらんください。 これ以降の部分に書いておくのは、ハッキリいって「文法の授業」です。「文法の授業」になってしまうのは、「屈折」とか「曲用」とかいう文法用語を説明しているためです。「屈折反復」というレトリック用語を知っておくためには、「屈折」「曲用」あたりの用語を解説しておかなけらばならないと思うわけです。 そういったわけで、文法が大好きだというごく一部のかたを除いては、とくに読む必要がないかもしれません。 |
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「屈折」というのは、単語のかたちが文法のルールにしたがって変化することです。つまり、文の中でどのようなはたらきをするかによって、ことばのかたちが変わることをいいます。 そして、この「屈折」というものは、2つに分けることができます。それは、「活用」と「曲用」の2つです。「活用」のほうは、聞いたことがあると思います。ですが、「曲用」というものを知っているかたは少ないのではないでしょうか。 そこで、この「活用」と「曲用」とについて、順番に見ていきたいと思います。 |
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「活用」というのは、動詞とか形容詞とかが文法の決まりにしたがって変わっていくことです。これは日本語にもあるので、わりとかんたんに分かります。 日本語でいえば。 たとえば動詞では、未然形とか連用形とかいったものです。 もしも、「〜ない」ということばが後ろにつづくときには未然形になる。「話す」だったら「話さ(ない)」とかたちを変える。 また、「〜ます」ということばが後ろにつづくときには連用形になる「話す」だったら「話し(ます)」というかたちになる。 このように、「話さ—」「話し—」「話す」…というようにことばが変化していくことを「活用」といいます。 また、形容詞・形容動詞と助動詞も、それぞれのルールにしたがって「活用」をしています。 |
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反対に、うまく「曲用」を理解するのは難しいことです。なぜなら、日本語には「曲用」がないからです。 いちおう定義としては、つぎのようにいえます。 ○「曲用」する単語 「曲用」をする単語は、いろいろあります。たとえば、名詞・動詞・形容詞・数詞などなど。ようするに、品詞はどれでもいいのです。 ○「曲用」する目的 「曲用」をする目的も、いろいろあります。いちおう文法の用語では、つぎの3つがいわれています。つまり、「性」のちがいをあらわすため、「数」のちがいをあらわすため、「格」のちがいをあらわすため。と、この3つです。 ふつう、「性」だとか「数」だとか「格」だとかがなんなのかは知られていません。というか、ふつう知る必要がありません。どうしてかというと、日本語には、「性」も「数」も「格」も、どれもないからです。 しかし、ここでは「曲用」の説明をしています。ですので、あまり踏みこまない程度に書いておこうと思います。 |
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「性」は、名詞や代名詞を文法のタイプによって区別するものです。 たとえば、ドイツ語では「男性」と「女性」と「中性」の3つに分けられています。 ここでいう「性」は、かならずしも性別とは関係ありません。たしかに人間をあらわす名詞のばあいには、その人が男ならば「男性」名詞を使います。反対に女ならば、「女性」名詞を使います。子供のばあいには、「中性」名詞になります。ですが、そのようなものとは基本的には関係ありません。 もう少しくわしく、ドイツ語から文法の「性」について見てみると。 男の労働者は「Arbeiter」とよびます。日本語の「アルバイター」は、ちょっとニュアンスはちがいますが、このドイツ語を語源にしています。そして、この「Arbeiter」は「男性」名詞とされます。 ですが、女の労働者は「Arbeiterin」といいます。こちらのほうは、「女性」名詞とされます。 ドイツ語では、名詞はこのようなちがいを持っています。 それは、たしかにそのとおりなのですが。 上にも書いたように「男性」名詞だとか「女性」名詞だとかは、人間や動物の男女とはつながりがないのがふつうです。 そのことを説明するために。 ある意味で日本人に知られている「ドイツ語の名詞」を、いくつか見てみます。たとえば、 「ゼーレ Seele (女性名詞)」 とか、 (←これは「心・精神・魂」の意味。英語の soul にあたる)まあ。たしかに、現実の「男」とか「女」とかいうことと結びついているわけではありません。ですがこんなふうに、とにかく名詞にはすべて「性」がつけられています。 もちろん、 「バウムクーヘン Baumkuchen (男性名詞)」にも。 いまさら、エヴァのネタは古いとかいうツッコミには、当サイトでは対応しません。 なお、さらにどうでもいいことを書くと。Gehirn というドイツ語は、「ゲヒルン」というかんじに、「ヒ」のぶぶんにアクセントをおくのが正しいのですが。 まあ。そういったどうでもいいことは、さておいて。 ここでのポイント。それは、 ヨーロッパの言語のおおくは、「男性」とか「女性」とかいった、「性」という区別をもっているということです。 そして、この「性」のちがいによって文法のタイプもちがうのです。 こういった、名詞のもっている「性」というジャンルによって、単語が変化するときに、ちがったシステムが適用される。このときにおこる、「性」にしたがった単語の変化のことを、「曲用」といいます。 なお英語では、文法の「性」がほとんど消滅しています。ただし代名詞には、「he」「she」「it」という「性」による区別が残っています。 いずれにしても。 このように「性」とよばれるものによって単語が変化するのが、「曲用」の1つです。 |
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「数」はかんたんにいえば、「単数形」とか「複数形」というものです。つまり、そのものが1つのばあいと2つ以上あるばあいとで、ことばのかたちがかわるものです。 たとえば。ドイツ語で「日」という意味の「Tag」という単語があります。この「Tag」は、「1日」ということです。もし「2日」以上のことを表したいばあいには、「Tage」というふうに変化します。 これは、英語でも同じです。「day」という単語が「days」という複数形になるのといっしょです。まあドイツ語の複数形は、たんに「-e」をつけるだけじゃないんだけれど。そのへんは、おいておきましょう。 これは、日本語の「一日」と「数日」とのちがいとは比べることはできません。なぜなら、「一日」と「数日」とは別の単語なのです。つまり、「一日」という単語が変化したから「数日」になったとか、そういうわけではないのです。なので、そのあたりとは関係ありません。 |
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「格」というのは、名詞や代名詞が文のなかでどのような意味で使われているかをしめすものです。これは日本語では、「〜が」とか「〜の」といった「格助詞」というものが後ろにくっつくことによって示されます。なので、名詞や代名詞それ自体は「屈折」しません。ですが、これを「屈折」によってあらわす言語もあります。 たとえば、ドイツ語は。 「格」のちがいによって、4種類も変化してくれます。1格(〜が)、2格(〜の)、3格(〜に)、4格(〜を)と、4つあるのです。その単語のはたらきによって、「〜が」という意味のときには1格になります。また、「〜の」という意味のときには2格になります。そして、この「格」のちがいによって、ことばのかたちも異なるのです。 たとえば、ドイツ語の「子供」(Kind)という単語を例にしてみます。このKindが「格」によって変化するようすは、つぎのような図に書くことができます。 といったぐあいです。Kindの「格」が変わることによって、KindになったりKindesになったりする。このような単語の動きが、「格」とよばれます。 なかにはフィンランド語のように、15個の「格」があることばもあります。もっとくわしくいえば、単数形は14格あって、複数形は15格あるらしいです。なお、参考本は「フィンランド語文法読本」(小泉保/大学書林)です。 なお英語では、文法の「格」もほとんど消滅しています。ただし代名詞には、「I-my-me」というような「格」による区別が残っています。 |
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たくさんの単語が「屈折」するかは、その言語によってちがいます。 たとえば、日本語のように「屈折」が少ないものもあります。日本語には「活用」しかなくて「曲用」がないのだから、当然だといえます。なお、このような言語を「膠着語」とよぶのは、忘れて良い知識です。 反対に、たくさんの「屈折」をするものもあります。ヨーロッパ系の言語には、おおくの「屈折」をもっている言語があります。英語は少ないとか、ドイツ語はまあまあだとか、ラテン語は厳しいとか。言語によってさまざまですが、ヨーロッパ系の言語には「屈折」がたくさんあります。このような言語を「屈折語」とよぶのは、忘れて良い知識です。 |
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なお。 英語で書かれた多くのレトリックの資料を見ると、「polyptoton」の項目がちがった説明をしています。そこに書かれている例文を見ると、単語が「屈折」しながら変化したものではないのです。たとえばある例文には、動詞の「feed」(食べる)と名詞の「food」(食べ物)とがならんでいる。そして、それを「屈折反復」とよんでいる。 しかし、このような定義はふつうしません。なぜなら、「feed」と「food」とは、もはや別の単語だからです。同じ単語が、「屈折」してかたちを変えているわけではないのです。こういう関係は、「派生語」といいます。ふつう、このようなものを「屈折反復」とはいいません。 たしかに『研究社新英語学辞典』(大塚高信・中島文雄[監修]/研究社)のように、「広義には派生語の反復を含める」としているものもあります。ですが、あくまで例外として認められているだけです。 もしかしたら英語には「屈折」が少ないため、このような説明になったのかもしれません。ごく少数の代名詞をのぞいて、英語では単語が「格」によって変化しません。また、「性」による区別もありません。そのため、英語はヨーロッパ系の言語のなかでは「屈折」がとても少ないのです。 けれども。 たとえば、ドイツ語の「Wikipedia」にある「Polyptoton」を読んでみてください。そこにある例文には、「Greise」と「Greis」だとか、「Freunde」と「Freund」だとかといった「屈折」した単語があげられています。また、説明している文でも「Flexionsform」といっていて、これは「屈折した形」という意味に受け取ることができます。なので私(サイト作成者)は、あくまで単語が「屈折」しているかどうかによって「屈折反復」を考えるものだと思います。 さらにいえば。 「派生語」がくり返しているばあいについては、「派生語反復法」をいうレトリック用語があります。そして、この「派生語反復法」と区別をする必要もあります。そういうことから考えても、「polyptoton」は「屈折反復」としておくべきだと思います。 ただし。 「屈折」であるか「派生」であるかということを、スッキリと完全に区別することはできません。その区別は、言語に違いによっては、大きなカタチのものであったりします。その意味では、「あまりカタっくるしく、2つを分けて考えなくてもいい」ともいえます。 |
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つまり、結論はつぎのようになります。 第1に「屈折反復」とは、ことばを「屈折」させながらくり返すことをいう。 第2に「屈折」とは、「活用」と「曲用」とに分けられる。 第3に「活用」は、日本語では動詞・形容詞・形容動詞と助動詞で見つけることができる。 第4に「曲用」は、日本語では見つけることができない。「曲用」についていろいろ書いたけれども、結局はそういうことです。 そして以上のことから。 日本語の文章では、「屈折反復」は動詞・形容詞・形容動詞・助動詞の「活用」にかぎって見ていけばよい。そのようにいうことができます。 * ——以上、いろいろ書きました。私(サイト作成者)は文法にうといので、まちがいもあるかもしれません。そのようなばあいには、知らせていただければうれしく思います。 |
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屈折反復 | |||
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語累用・同語変形使用・同根語反復・語形変化反復・同語異各反復・同語異形反復・重畳法・ポリプトートン・ポリュプトートン |
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反復法、畳句法、畳語法、隔語句反復、復言法、類義累積、回帰反復、首句反復、結句反復、首尾語句反復、前辞反復、おうむ返し、同綴同音異義、異義復言、類音語反復、トートロジー、循環論法、疑惑法、継起的音喩 | |||
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上にも書きましたが、この「屈折反復」は文法上かなり見つけづらいものになっています。そのため、日本語で書かれた本の中で解説がくわしい本はほとんどありません。残念ながら。上に書いた本も、それほど「屈折反復」に言い及んでいるわけではありませんが、一応連行と署としてあげておきます。 | |||
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