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代換 だいかん hypallage | |
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『天使な小生意気』
1 西森博之 |
——『天使な小生意気』1巻表紙 (西森博之/小学館 少年サンデーコミックス) |
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代換は、文のなかにある2つのことばの位置を入れかえるレトリックです。つまり、2つの語または語句が置かれる位置を交換するものです。 | |||||
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「代換」は、「文のなかで、2つのことばの位置を交換する」ものです。ここから、「代換」を使うことによって常識をくつがえす」、という効果があります。 | |||||
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「代換」を使うことで、興味をひくような目新しい表現を作り出すことができます。 | |||||
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「代換」では、不自然な場所に不自然なことばが置かれることになります。ですので、よりインパクトのある表現を生みだすことができます。 | |||||
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「代換」では、文法のルールどおりであれば2つのことばが占めているはずのそれぞれの場所を、お互いに逆にすることになります。 | |||||
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「代換」を使う上で気をつけなければいけないこと——その1。それは「代換」をつかうことによって、文の読み取りができなくなってしまう可能性があるということです。 | |||||
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「代換」を使う上で気をつけなければいけないこと——その2。「代換」では、本来あった単語の位置を変えることになります。そのため、文法のだけの考え方を押し通そうとすると、誤りになることあがりえます。 | |||||
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引用は、『天使な小生意気』1巻表紙からです。 この『天使な小生意気』というタイトル自体が、「代換」の例になります。 なにせ、このタイトル、日本語として間違っています。 そのことは、あなたの使っているパソコンで「てんしなこなまいき」と入力して変換キーを押せば、すぐにわかります。なにせ、誤変換するのです。 参考までに、私の使っているATOK12(古!)で変換すると、つぎのようになります。 「点姿子生意気」とまあ、見事なまでに誤変換してくれます。あなたのIMEでも、「天使な小生意気」を辞書登録するという、おかしなマネをしていなければ、見事に誤変換してくれます。 念のため、どこが「代換」に当たるのかということを確認しておくと、つぎのようになります。 まず、もともとは「小生意気な天使」という言葉であった。 そのうち、被修飾語にあたる「天使」という言葉を「小生意気」の位置にもっていった。 逆に、修飾語にあたる「小生意気」という言葉を「天使」の位置にもっていった。 このように、両方を入れ替えることで、2つの関係が論理的に割り当てられた。 …とまあ、こんな感じになります。 このように、文法上は名詞があるはずの場所に形容詞(形容動詞)が入り、逆に形容詞(形容動詞)があるはずの名詞に入る。 これが、「代換」のパターンのひとつです。 これから下のほうに書くことになる「代換」の4つのパターンの中では、「限定語反転」にあたります。 |
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「代換」というレトリック。これはあまり見かけないものです。なぜかというと「代換」を成り立たせるためには、次にあげるような2つの関門があるからです。 第1に。この「代換」は文法に抵触する、文法の規則違反ギリギリのレトリックです。そのために、誤って書いたんだと受け取られる可能性があるからです。 第2に。この「代換」は、日本語ではめったにお目にかかりません。なぜなら、日本語の性質として、「語順の決まりが緩やかである」ということがあるからです。日本語には、
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実をいうと。 この「代換」というレトリック用語の使いかたは、学者によってバラバラです。したがって、この「代換」を説明するのは、かなりやっかいです。しかも、長い文章になります。おまけに、難しい文章になってしまっています。 その点を、あらかじめご了承ください。 で、とりあえず。 『レトリック事典』によれば、「代換」に含まれる可能性があるレトリックは、つぎの4つです。
この4つのうち、どれを「代換」に含めるかについては、ちっとも意見が一致していません。 そこで、ふたたび『レトリック事典』を見ると。そこには、8種類もの説が並んでいます。まさに、百家争鳴。 しかたがないので、とりあえず『レトリック事典』をもとに表にしてみました(同書105ページ)。 「○」マークがついているものが、「代換」に含めるもの。「○」マークがついていないものが、「代換」に含めないものです。 と、「代換」についての考えかたを7つほど説明したあとで、『レトリック事典』の筆者は、 という考え方をとっています。そのため、合計で8種類も「代換」についての説が書かれているわけです。 さらに。 私(サイト運営者)の手元にある資料の中で、「代換」について書かれているもの。ついでだから、これについても表にしておくと、 という感じになりました(もしかしたら、間違いがあるかもしれないけれど)。まさに、侃々諤々。 さて。 では、このサイトでは「代換」を、どのように考えていくことにするか。そういった問題が、やっぱり出てきます。 で、とりあえず。 今現在のところ引用している『天使な小生意気』という文は、「限定語反転」です。なので、「限定語反復」は「代換」に含まれることにしておきます。 そのほかについては、未定ということで…。 |
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この「代換」には、先ほども書いたように、下位の分類として「転移修飾語」というものがあります。 このサイトでは、「転移修飾語」ついては別のページにしました。ですので、そちらもあわせてご参照ください。 |
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「代換」で入れかわるのは、ことばの「関係」です。 これに対して、ことばの「位置」がかわるレトリックとしては、「倒置法」という用語があります。 たしかに「代換」と「倒置法」とは、近いタイプのものです。ですが「代換」は、『レトリックの消息』(佐藤信夫/白水社)に書かれていることばを借りれば、 ただの単語の引っ越しではなく、二者のあいだで流動する視点を形成するというものです。 |
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あと。たぶん「限定語反転」だというニオイのする、そんな例として。
ちょっと古いけれども。『彼氏彼女の事情』(津田雅美/白泉社 花とゆめCOMICS)2巻にある「番外編」のタイトルをあげておきます。 その「限定語反転」なフンイキがある、「番外編」のタイトルというのは、 「桜の林の満開の下」というものです。 なおアニメでは、『彼氏彼女の事情』のACT 0.5のタイトルになっています。 このフレーズが、「限定語反転」と感じる理由。それは、「満開」なのは「林」なのではなくて「桜」だということです。つまり、 「桜の満開の林の下」というふうに、「満開」ということばをズラしたほうが、しっくりくる。とまあ、そういうわけで「限定語反転」みたいだというわけです。 なお。このタイトルが、 『桜の森の満開の下』(坂口安吾)をマネてつけたタイトルだというのは、ほぼ間違いありません。ですが、『桜の森の満開の下』と「桜の林の満開の下」という2つの間には、なにか関係があるわけではなさそうです。しいていえば、作品のメインとなる場所が「桜の下」だというくらいしか、関連がないのではないと感じます。 それと。このタイトルにつかわれている言いまわしで、老婆心ながら注意しておきたいことがあります。それは、正統な文法ルールにしたがって言えば。「の」という助詞を3回つづけるのは、あまりよいことではないということです。 そのことは。コミックの182ページ〜183ページに書かれている、有馬のモノローグ。そこからも、うかがい知ることができます。 どういうことなのかというと。有馬のモノローグは、 こんなにはっきりととなっているのです。この「番外編」についているタイトルは、「桜の林の満開の下」となっている。なのに、あえて「満開の桜の下で」という言いまわしを使っているのです。ここからも、意識的に「の」が3回も連続するのを避けていると受け取とることができます。 |
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代換・代換 | |||
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ハイパラジー、イパラージュ | |||
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変換法、転移 |
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転用語法、倒置法、交差呼応、限定語反転、転移修飾語 | |||
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辞典とは思えないほど、細かな点について書かれています。 | |||
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「代換」について、かなり踏みこんだことがかいてあります。同じ者の『レトリックの意味論—意味の弾性—(講談社学術文庫 1228)』(佐藤信夫/講談社)にも、「代換」にかんする記載があります。 | |||
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こちらも「代換」について、くわしく書いてあります。 | |||
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