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類義区別 るいぎくべつ distinctio,paradiastole


『星界の戦旗II-守るべきもの-』29ページ(森岡浩之・宮越和草・サンライズ・WOWOW/メディアワークス 電撃コミックス)
  • ジント「気に入らないようだね」
  • ラフィール「! 何故そう思うんだ?」
  • ジント「いやあ… 何となく」
  • ラフィール「別に 気に入らない わけじゃない!
  • ただ 気が進まない だけだ!」
  • ジント「なるほど」
  • サムソン「さてこの二つの言葉には
  • どれだけの隔たりが
  • あるんでしょうかね…」
  • ソバーシュ「さあ 私ならそんな些事には
  • こだわらない事にするね
  • 身の安全のために」
-『星界の戦旗II-守るべきもの-』29ページ(森岡浩之・宮越和草・サンライズ・WOWOW/メディアワークス 電撃コミックス)
  • 定義重要度2
  • 類義区別 は、似ている言葉を、はっきりと区別して使うレトリックです。つまり、うっかりしていると「同じ意味だ」と受けとられてしまいそうな2つのことばを、並べることによってハッキリと区別する表現です。

  • 効果
  • 効果1 何か主張があるばあいに役立つ
  • これまでとは違う主張があるときに、今までと少しズラした別の言いかたをする。それは、多くを言わずに留めておいたように見えるけれども、実はその違いを強調してする役目を果てたしている。そのような形をとることによって、より強く主張をすることができます。
  • キーワード:主張、言い立てる、言い通す、言い張る、考えかた、思考、思想、アピール

  • 使い方
  • 使い方1 細かい違いに注目する
  • ほんとうは細かい違いにすぎないようなこと。だけれども、わざと2つの考えを比較して、そのあいだの距離を強調するといったことすることができます。
  • キーワード:距離、距たり、(違いが)細かな、細かい、微細な、ささやかな違い、僅か、ささい、小さい、小さな、瑣末な、多義性、曖昧、ほとんど同じ

  • 使い方2 その細かな違いをハッキリ区別する
  • 似かよっている、ことば同士。その2つのことば同士であっても、少しは違いがあるはずです。その違いを明らかにするのが「類義区別」です。

  • 例文を見る)
  • 上の引用は『星界の戦旗II』1巻から。

    星界軍と人類統合体との、2つの勢力があるという世界。そして、この星界軍と人類統合体とのあいだで、戦闘がはじまる。
    登場人物のラフィールやジントたちは、星界軍の一員として戦いに参加している。

    そんななかでの戦況は、圧倒的に星界軍のほうが優勢。そのため、さまざまな地域を星界軍のものにしていく。
    が、そのときに、それぞれの占領した星での「領主代行」を決めておかなければならないことになる。

    それが引用の場面です。

    「領主代行」は皇族か貴族でなくてはならない、という決まりがある。で、ラフィールは皇族で、ジントは貴族(伯爵)であるために、その役が回ってくる。それに対してのラフィールの言葉、
    別に 気に入らない
    わけじゃない!
    ただ 気が進まない だけだ!


    というところを「類義区別」と見ます。

    さて、皆さんは、「気に入らない」と「気が進まない」との間にどれくらいの違いを感じるでしょうか。
    サムソンも「どれだけ隔たりがあるのでしょうかね…」と言っています。

    ですが、ラフィールは明確に分けて「気に入らない」ではなくて「気が進まない」なんだ、と言っています。

    このように、似通った言葉を明らかに区別して並べて使うレトリックが「類義区別」です。

  • 例文を見るその2)
  • 『ラグーンエンジン』(杉崎ゆきる/角川書店 あすかコミックス)
    • 焔(ある日、おれのクツ箱に
    • ラブレターが入っていた 。」
    • --じゃなくて、
    • 恋文が入っていた 。」)


    この「類義区別」が使われている例を、もう1つ見つけることができました。それは、『ラグーンエンジン』(杉崎ゆきる/角川書店 あすかコミックス)の1巻。

    このマンガの主人公は、「等軍焔(らぐんえん)」と「等軍陣(らぐんじん)」の兄弟。彼ら兄弟の家は、代々「凶(マガ)」と呼ばれる悪霊とか幽霊とかを退治している。

    …と、いつもなら説明を続けます。ですが、今回見つけたものは、このストーリーと直接には関係していないので、あとは省略させていただきます。

    で、「類義区別」が使われていたのは、こんな文。
    • ある日、おれのクツ箱に
    • ラブレターが入っていた 。」
    • --じゃなくて、
    • 恋文が入っていた 。」
    というわけで、「恋文」を手にした、兄の「焔」。なんで、「ラブレター」ではなくて、「恋文」なのか。それは、その恋文に書いてあることばが、
    等軍焔様
     お慕い
     申し上げております。

    という、古風な文体で、しかも筆で書かれたものだったから。

    それにしても、「ラブレター」と「恋文」とは、意味としては違いがないはずです。ただ、あまりに古風なので、「ラブレター」という「外来語」を使うのではなくて、「恋文」という現在ではほとんど使われなくなったことばを使った。
    というわけで、この引用した「ラブレター/恋文」も、「類義区別」と言えるでしょう。

    なお、蛇足ながら。

    本当に、本物の「古風な恋文」ならば、「お慕い申し上げております。」とは書かないはずです。
    それは、物知りな方ならば気がつくはずです。つまり、
    むかし、手紙の文章には、句読点「、」「。」を使わないという習慣があった
    はずだからです。現在でも、目上の人に対しては、句読点「、」「。」を使わないのが正式な手紙です。もはや、この習慣も薄れてきていて気にする必要がないとも思いますが。

    まあ、ようするに、句点「。」を使っているこの手紙には違和感があるのです。だって、筆で書かれた古めかしい手紙なのに、句点「。」が打ってあるから。

    まあ、実はこの手紙は…。
    …いや、私が書くのはやめておきます。みなさんは『ラグーンエンジン』を読んで、確かめてみてください。

  • 例文を見るその3)
  • ほかには、『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子/講談社 コミックスKiss)1巻から。

    「のだめ」がピアノで演奏する、 ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」。その独特の弾きかたについて、千秋はこのように言っている(20ページ)。
    デタラメだけど、間違ってるんじゃない
    そりゃあ「デタラメ」と「間違っている」とは、同じことばではないけれども。ここにも、「類義区別」っぽいものがある。


  • レトリックを深く知る
  • 深く知る1 「類義区別」は多い
  • そういったわけで。
    この「類義区別」というレトリックの技術を、実際にコミックの中で使っている本。それは、それこそ枚挙にいとまがありません。

    それなのに、このレトリックはマイナー扱いです。

    「類義区別」「微差拡大」「多義識別」のいずれを検索しても、ほとんんど収穫がありません。また英語名は「distinction」なので、検索すること自体が無理だと言えます。まあ、いいんです。「類義区別」はコミックスであっても、いくつも見つけることできる。そのことが、分かっていただけたと思うので。


  • 深く知る2 「愛称語」と「換喩」との関係
  • この「類義区別」に関連して。
    『日本語レトリックの体系』には、「微差拡大」というレトリックが用意されています。

    これは、
    ふつうに見ていると似たように思われる2つの言葉のあいだの違いを、極端に強調して、その違いを目立たせるレトリックである

    と説明されています。

    ですのでこの「微差拡大」は、「類義区別」とほぼ同じものだと考えていいでしょう。

  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 類義区別
  • 呼び方3
  • 微差拡大
  • 呼び方1
  • 多義識別ディスタンクシォン・分別法・区別(法)

  • 参考資料
  • ● 『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
  • 日本語の例文が載っているいます。日本語での「類義区別」を知るのには大事な本です。なおこの本では、「微差拡大」という用語が使われています。


  • 余談
  • 余談1「アーヴ語」での会話を説明するための「フリガナ」
  • なお、「 人工言語 」での注意書きと同じく。

    上で引用した「ラフィール」「ソバーシュ」たちは、「アーヴ」と呼ばれる(人間に似た姿をした)生命体です。ですので、この「ラフィール」と「ジント」とのあいだの会話では、「アーヴ語」という言葉で交わされています。

    そしてこの本では、そのアーヴ語流の言い回しが「フリガナ」として(カタカナで)書いてあります。

    しかし、いちいち「星界軍」に「ラブール」、「帝国」に「フリューバル」といったアーヴ語の「フリガナ」を忠実に書いていったら、すさまじく読みにくくなります。また、手間もかかります。ですので、アーヴ語流の言い回しとして書かれている「フリガナ」については、このページでは省略して書いていくことにします。

    なお、
    アーヴ語がどんなものかを見てみたい人は、「 人工言語 」のページに行くと見ることができます。
  • 「フリガナ」に通常の読み方と異なるものが振られているという点については「 添義法 」を参照して下さい。

以上が、おわびとご注意です。

  • 余談2「個人的な意見」--小説を読んで欲しい。
  • あと、個人的な意見としては。

    もしも、まだ『星界』シリーズを楽しんでいないのだとしら。
    早川書房から出版されている「文庫版(ハヤカワ文庫)」の原作のものから読んでほしいというのが私の希望です(「 人工言語 」のページでも同じことを書きましたが)。

    『星界』シリーズは、アニメやマンガ、ドラマCDなど、いろいろな方面に「メディアミックス」しています。

    しかし、いちばん原点にあって読者を引きつけるパワーがあるのは、ハヤカワ文庫版の『星界の紋章』と『星界の戦旗』だと思います。

    ですから、興味のある方は「ハヤカワ文庫」からスタートして下さい(ちょうど作者が遅筆なのでやや古い本になっているので、中古ならば1冊100円くらいで手に入れることができるかもしれないし)。