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擬物法 ぎぶつほう crystallization


『僕は友達が少ない』[右上]1巻99ページ・[下]2巻116ページ(いたち[漫画]・平坂読[原作]・ブリキ[キャラクター原案]/メディアファクトリー MFコミックスアライブ)
(右上)1巻99ページ
  • 夜空「ちょっとプレイ時間見せろ 《肉》
  • 小鷹(ただの 《肉》 になった!)
(下)2巻116~117ページ
  • 小鷹「…てかすっかり
  • 『肉』 って呼び名が 定着したよな」
  • 星奈「…そうね あのバカ
  • 変なあだ名 付けやがって…」
  • 小鷹「そのわりにけっこう
  • あっさり受け入れた
  • 気がするんだが 最初から」
  • (中略)
  • 星奈「…あ あだ名を
  • 付られたの 初めてだったから
  • その… ちょっと…… う…嬉しくて」
  • 小鷹(……う 嬉しい…!!!)
-『僕は友達が少ない』[右上]1巻99ページ・[下]2巻116ページ(いたち[漫画]・平坂読[原作]・ブリキ[キャラクター原案]/メディアファクトリー MFコミックスアライブ)
  • 定義重要度3
  • 擬物法 は、人間を物にたとえるレトリックです。つまり、人間を物のように扱うというものです。

  • 効果
  • 効果1 攻撃の相手に使うことで、おとしめることができる
  • 人間を物に見立てる。一般的には、人間の自尊心を踏みにじる行為です。
  • キーワード:おとしめる、見下す、さげすむ、軽べつ、侮辱、バカにする、軽んじる、蔑称、悪意

  • 効果2 使うときによっては、滑稽さが出てくる
  • 使われる場面によっては、下らないナンセンスな雰囲気が生まれます。
  • キーワード:滑稽、下らない、ナンセンス、バカらしい、バカバカしい、おもしろい、おかしい、ユーモラス

  • 使い方
  • 使い方1 人をものに見立てる
  • 物を人として扱うのが「擬人法」。これにたいして、人を物として扱うのが「擬物法」。この「擬物法」と「擬人法」の2つは、うらがえしのレトリック用語です。
  • キーワード:擬物

  • 注意
  • 注意1 バカにした言いかたになることがある
  • 「擬物法」で人を扱ったばあい、相手を見下した言いかたになることがあります。ですので、使うには、時と場所と相手を選ぶことが必要です。

  • 例文を見る)
  • (右上)1巻99ページ
    • 夜空「ちょっとプレイ時間見せろ 《肉》
    • 小鷹(ただの 《肉》 になった!)
    (下)2巻116~117ページ
    • 小鷹「…てかすっかり
    • 『肉』 って呼び名が 定着したよな」
    • 星奈「…そうね あのバカ
    • 変なあだ名 付けやがって…」
    • 小鷹「そのわりにけっこう
    • あっさり受け入れた
    • 気がするんだが 最初から」
    • (中略)
    • 星奈「…あ あだ名を
    • 付られたの 初めてだったから
    • その… ちょっと…… う…嬉しくて」
    • 小鷹(……う 嬉しい…!!!)

    といった感じで。
    そして、いつのまにか 『肉』 が定着していく。

    もちろん、 『肉』 なんていうあだ名をつけられて気に入らない。…と思いきや、本人はそうでもない。そういったことを話しているのが、左の画像のうち下の部分。

    そんなあだ名で呼ばれても、本人は構わない。そういったわけであれば、問題ないのかもしれません。ですが、人間を 『肉』 よばわりするのは、ふつうは侮辱的なものであるはずです。

    なので、「擬物法」に当たるということになります。

  • 例文を見るその2)
  • 『パフェちっく!』3巻154ページ(ななじ眺/集英社 マーガレット コミックス)
    • 大也(回想)「めちゃくちゃ
    • かわいーつーの!!」
    • 風呼( 大也とゆー名の
    • ガソリンスタンド ただ今
    • ワタクシ ハイオク満タンで
    • ございます♡
    • 「おいひ~~ッッ♡」


    次の例文は『パフェちっく!』3巻から。
    主人公は、風呼という女の子。

    彼女が住んでいるアパートの上の階に、「大也」という男の子が引っ越してきた。
    そして風呼は段々と、大也のことが気になりだしていく。そして近頃は、好きだという気持ちを自覚するようになった。

    そんな中、大也は風呼の笑顔を見て、こんな言葉を投げかけてくれた。
    めちゃくちゃ
    かわいーつーの!!
    その言葉に対しての風呼の気持ちが、つぎのようなもの。
    • 大也とゆー名の
    • ガソリンスタンド ただ今
    • ワタクシ ハイオク満タンで
    • ございます♡
    ここでは、2つの「擬人法」が使われています。つまり、
    • 「大也」という「人間」を、「ガソリンスタンド」という物にたとえている
    • 「ワタクシ」という「人間」を、「自動車」という物にたとえている
    という2点です。

  • 例文を見るその3)
  • 『ミントな僕ら』4巻107ページ(吉住渉/集英社 りぼんマスコットコミックス)
    • 栗栖「ぼくは このルックスだから
    • 昔から 大勢の女の子たちに
    • 騒がれ続けてきた…
    • それは快感ではあるんだか
    • 彼女たち一人一人を
    • 個体として
    • とらえきれないと言うか
    • みんな同じ
    • 野菜の集団 のように
    • 見えてしまって…」
    • 女の子たち(野菜状態)「キャーキャー
    • クリスー クリスー」
    • のえる「ヘ ヘエ~」


    例文は『ミントな僕ら』4巻。

    主人公は、「のえる」。

    学校にある「のえる」の机の中に、きれいなラベンダー色の封筒が入っていた。
    「中見てみたら?」というアドバイスのとおり、中をのぞいてみると
    • 南野のえる様
    •  I LOVE YOU
    • 放課後中庭であなたを
    • 待っています

    というラブレターだった。

    誰からの手紙かと思って差出人を確かめると
    Chris(クリス)

    という、なんだかふざけたような名前。

    とりあえず放課後、指定のとおりに中庭に行ってみる。
    そこに現れたのが、妙なナルシスト(のちに「栗須」という名前だとわかる)。

    そこでの発言で、「擬物法」が使われています。
    自分にあこがれる女の子のことを
    野菜の集団
    呼ばわりするのはヒドいですが、とにかく、この部分が「擬物法」です。

    「野菜」は厳密に考えると植物です(スーパーなんかに行くと「物」みたいに売ってあるけど)。ですので、これは「人間」を人間以外のものである「植物」にたとえています。したがってこの発言は、このページの最初に書いた「結晶法」を考慮に入れても、「擬物法」といえるでしょう。

    今の「のえる」は、かたちの上では佐々という男の子とつきあっているのですが、
    • 「佐々龍至」から
    • きみを奪ってみせる
    • じゃ またね
    というナルシストな言葉を残して、去っていきました。

    今回のように「自分にあこがれる女の子」のことを「野菜の集団」なんて呼ぶヒドい場合は、「 軽蔑語 」にも通じるものがあります。


  • レトリックを深く知る
  • 深く知る1 「擬物法」と「擬人法」との関係
  • 「擬物法」の反対にあたるのが「 擬人法 」で、こちらは人間でないものを人間にたとえるレトリック。出てくる頻度としては、「 擬人法 」のほうが多くなります。


  • 深く知る2 「擬物法」と「結晶法」との関係
  • 「擬物法」に似たレトリックとして「結晶法」があります。この「結晶法」と「擬人法」とを、どのように区別するかについては参考書によって多少の揺らぎがあります。

    ですが。このサイトでは、同じものとして扱っていくことにします。


  • 深く知る3 西洋レトリックでの、「擬物法」や「結晶法」の扱い
  • 「擬物法」と「結晶法」の概念は、西洋のレトリックには見あたらないのです。「 擬人法 」や「活喩法」のほうは、しっかりとある。なのに西洋レトリックには、「擬物法」と「結晶法」に当てはまるレトリック用語がない。なのでおそらく、これらは日本で作られた概念であると思われる。

    …という趣旨のことを、佐藤信夫氏が『レトリック・記号etc.』(創知社)で述べています。佐藤信夫氏が言うのだから、十分に信用していい言葉です。

    ただし。それに続けて、佐藤氏が述べているように。
    「擬物法」とか「結晶法」とかいった、特別な呼びかたが見あたらない、というだけのことです。つまり、西洋でも「人をモノとか生き物にたとえる」ということ自体は、ちゃんとあります。

    ふつう、西洋のレトリックでは。
    「擬物法」とか「結晶法」とかに当たるレトリックは、「 隠喩 」か「 換喩 」の一種に分類されます。つまり、日本語で「擬物法」だとか「結晶法」といわれているものは、「 隠喩 」か「 換喩 」にふくまれるパターンの1つとして扱われます。ようするに、取りたてて「人をモノとか生き物にたとえる」ためのレトリックの用語が作られることはなかったという、それだけの話です。

  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 擬人法
  • 呼び方2
  • 結晶法

  • 参考資料
  • ● 『レトリック・記号etc.』(佐藤信夫/創知社)
  • おそらく、日本で一番「擬物法」について説明してある本だと思います。世界における「擬物」概念だとか、「擬物法」と「結晶法」の違いについてとか。いろいろな点について説明が及んでいます。

  • ● 『日本語は人間をどう見ているか』(籾山洋介/研究社)
  • こちらも「擬物法」に関しての本だ、ということができます。一度も「擬物法」とは書かれていませんが、この本が論じているのは「擬物法」と同じものです。なおタイトルとなっている、『日本語は人間をどう見ているか』ということばが、「擬物法」というよりは「代換法」か「擬人法」という感じがします。

  • ● 『比喩表現の理論と分類』(国立国語研究所/秀英出版)
  • 擬人法 」「活喩法」「擬物法」「結晶法」の4つのレトリックを、パターンに分けて考察しているものとしてあげることができます。4種類のレトリックそれぞれが、どれくらいまで適用範囲があるものなのか。それを知る手がかりになります。