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女房詞
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女房詞
女房詞
にょうぼうことば
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先生(ネコ)「うーん うまいなー
肴のことを 女房詞では
こん
というのだ
ごんというと
ごぼう
になるから 要注意だ」
生徒「……はいはい」
先生(ネコ)「
団子のことは
いしいし
という」
生徒「石?」
先生(ネコ)「
おいしい
という意味だ」
生徒「・・・はあ」(ますます脱力)
-『言の葉遊学』50ページ(わかつきめぐみ/白泉社 JETS COMICS)
女房詞
とは、もともとは宮中で働く女性のあいだで使われた、一種の隠語です。禁中に仕える女房たちが活動するなかで生まれたものです。そのため、主に着るものや食べものに関する語のように、女房たちが仕事をする時に使われました。
上品で優雅な言葉づかいになる
「女房詞」は、禁中にいた位の高い「女房」によって作られたものです。したがってそのことば遣いは、上品で優雅なものになります。
:上品、美しい、きれい、こぎれい、粋、小粋、優美、エレガント、優、気高い、有縁優雅、貴族性、丁寧、丹念、丁重、うやうやしい
女房たちが生みだしたので、女らしさが見られる
上にも書きましたが、「女房詞」は「女房」のあいだで生まれたものです。そして「女房」は、当然に女性です。そういったことばの生まれかたからいって、「女房詞」は女性らしさをもっているのです。
:しつけ、しつける、女らしさ、女性的、たおやか、しなやか
婉曲的なことばづかいで、多くのばあい「隠語」の性格を持つ
「女房詞」は、かならずしも「隠語」だけではありません。ですが多くのものが、「隠語」の味わいがあります。
:隠語、スラング、合いことば、符牒、婉曲、持って回った、遠回し
機知に富んだ、シャレた言いまわしになる
機知に富んでいたり、シャレのように気のきいた表現になります。
:機知、ウイット、機転、機知、シャレ、ユーモア、軽口
衣食に関するものがおおい
食べるものや着るものといった、女房が日ごろ身のまわりにあったもの。そういったものにたいして、「女房詞」が使われました。
:食べ物、食物、食事、食料、食糧、衣服、衣類、服
あからさまに、そのものの名前を呼ばないようにする
宮中では、食べるものや着るものの名前を直接に呼ばないことになっていました。それは、あからさまに言うと「はしたない」とされていたからです。
:はしたない、下品
引用は『言の葉遊学』から。
ネコのすがたをした「先生」が、「女房詞と」は何かということについて話しています。つまり、
女房詞では
肴
のことを
こん
ゴボウ
のことを
ごん
団子
のことを
いしいし
というそうです。引用した部分は、女房詞の説明の一部分にすぎません。ネコの先生は、ほかにも色々な「女房詞」をあげています。くわしくは、このコミックを読んでみてください。
「女房詞」の歴史
「女房詞」は室町時代に使われはじめた、といわれています。
そのときの「女房詞」の使い手は、禁中で仕えていた女房でした。(なので、「女房」詞なのです)。
ですが、時代が進むにつれ、将軍家や公家、さらに大名の屋敷で働く女房のあいだにひろまっていきました。江戸時代になると、町人の女性でも使われるようになりました。
現代では、日ごろ「女房詞」だとは気がつかないところで、「女房詞」が使われています。
たとえば「しゃもじ」。これは、もともと「ひしゃく」だったものが「しゃ」の文字だけ使ってわれ、さらに「○○もじ」を加える。そういった流れで、つくられたものです。もともとは「女房詞」です。しかし、そのようなことを意識して毎日使ったりはしません。
「女房詞」の典型的なもの
『古典文学レトリック事典』(國文学編集部[編]/學燈社)によると、
「お××」というかたち(例:なすび→おなす、さつま→おさつ)
「××もじ」というかたち(例:しゃくし→しゃもじ)
といった、「お××」や「××もじ」のタイプが多いという説明がされています。
また、上に書いた2つのメジャーな「女房詞」の作りかた以外には、次のものがあります。
短縮してそれをくり返すもの。例:かうかう(香のもの)、するする(するめ)など。
語頭が母音または「ハ」で始まる語は「オミ○○」を頭につける。例:おみあし(足)、おみおつけ(味噌汁)、おみはし(箸)など。
漢字・漢語をもとにして、音読み・訓読みする。例:くこん(酒←九献)、うまふさ(午房)など。
味覚・触覚によるもの。例:おひや(水)、おこわ(強飯)など。
視覚によるもの。例:おひら(鯛)、おいた(かまぼこ)など。
聴覚によるもの。例:ぞろ(そうめん)など。
言葉の解釈や縁起かつぎ、故事によるものもある。例回まちかね(小糠←来ぬか)など。
といったふうになります(参考:『日本語解釈活用事典』(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助[共編著]/ぎょうせい))
「女房詞」と「隠語」「しゃれ」との関係
この「女房詞」は、一部の女性のあいだだけで通用するという意味で「
隠語
」の一種ということができます。
いちおう、
「
隠語
」であるということを強調する立場
「
しゃれ
」であるということを重視する立場
を2つの説があります。ですが、「
隠語
」の一種として考えてよいと思います。
女房詞
『しゃれ』(鈴木棠三/東京堂)
親切な説明がされています。非常に長い説明文です。「女房詞」をきわめたいとすれば、必ず読む本です。
『日本語解釈活用事典』(渡辺富美雄・村石昭三・加部佐助[共編著]/ぎょうせい)
かなりくわしいです。この本は、日本語で使われるレトリックの用語をたくさん解説してあることが多いので、重宝します。
『古典文学レトリック事典』(國文学編集部[編]/學燈社)
過不足のない解説が、されています。難しいことばも、なるべく使わないようにしていると思われます。なので、読みやすい文に仕上がっています。
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