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複合語短縮
関連レトリック
複合語短縮
複合語短縮
ふくごうごたんしゅく
compound shortening
ありす(人間…? 動物? 東京タワーの
上から 飛んできたよね 映画の撮影?
だって宙 浮いてるし …てことは!?)
ニョゼカ「私の名は ニョゼカといって…」
ありす(だっしゅ)
ニョゼカ「…ちょっと 待たぬか!?」
ありす「きゃーっ 来ないで 来ないでーっっ
よくある話よーっ 東京タワーから
落ちて死んだ児童が
コスプレ
姿で取り憑くってー!!」
ニョゼカ「めったに あるか そんな話!」
ありす「どうせなら
ロリコン
趣味の
オタクに取り憑いてっっ!!」
-『ありす19th』1巻58?59ページ(渡瀬悠宇/小学館 少コミフラワーコミックス)
複合語短縮
は、「複合語」をつくったあとで、それを短くするレトリックです。つまり、2つのことばが結びついて新しいことばをつくったあとで、そのことばを短くするものです。
落ちついた略語をつくることができる
日本語で複合語をもとにした略語(つまり「複合語短縮」)をつくるばあい、4拍の大きさになるのがふつうです。3拍以下では、短すぎて意味が分かりにくくなってしまう。けれども5拍以上だと、長すぎて省略の意味がなくなってしまう。そのため、4拍あたりにおちつきます。
:略語、省略、つづめる、約する、省く、省力
頭の部分だけを抜き出して、それを結合する
まず2つの語を単純に結びつけて「複合語」を作ったあとで、そこから2つの語の頭どうしを残すものです。
「複合語短縮」の例
「ポケモン」を例にしてみましょう。
まず、「ポケット」と「モンスター」という、関係のない2つのことばが結びついて、「ポケットモンスター」という単語ができます。これは「複合語」です。
次にこの「ポケットモンスター」の「ポケ」の部分と「モン」の部分だけを残して、あとは省略するという操作をします。このようにして、「複合語短縮」ができあがります。
引用は『ありす19th』1巻から。
主人公は、「ありす」という少女。
彼女は、姉の「真由良」とのあいだで、「若宮」という少年と三角関係だった。つまり、「ありす」も「若宮」が好き。そして、「真由良」も「若宮」が好き。それでもって、「ありす」と「真由良」は妹と姉という関係。
しかし。姉の「真由良」が「若宮」に告白する。そして、「若宮」もOKした。そのため、「ありす」は失恋してしまう。
そんな中を歩いていると。
東京タワーの上から、ウサギのようなすがたをした奇妙な動物が、空を飛んで降りてくる。それが引用のシーンです。この作品が「ファンタジック」でありつつも「シリアス」な一面を持っていることが、だんだんと見えてくる。その先がけといえる場面です。
それで、「複合語短縮」となっているのは、
「コスプレ」
「ロリコン」
という2つのことばです。
「コスプレ」
のほうは、「コスチューム」と「プレス」とが結びついて「コスチューム・プレス」となった後で、「コス」の部分と「プレ」の部分とが残ってできています。
「ロリコン」
のほうは、「ロリータ」と「コンプレックス」とが結びついて「ロリータ・コンプレックス」となった後で、「ロリ」の部分と「プレ」の部分が残ってできています。
ですので、この「コスプレ」と「ロリコン」とは、両方とも「複合語短縮」ということになります。
「複合語短縮」と「混成語」との違い
この「複合語短縮」と取り違えやすいものに、「
混成語・かばん語
」というものがあります。
しかし「複合語短縮」は、
関係のない意味の言葉どうしの混ぜる
一語の前半部分と、もう一つの語の前半部分とを結合して作り出す(前半+前半)
というものです。
この点「
混成語・かばん語
」は、
意味が似ている言葉どうしを混ぜる
一語の前半部分を、もう一つの語の後半部分とを結合して作り出す(前半+後半)
というものです。
上に書いたような条件によって「複合語縮約」なのか、「
混成語・かばん語
」なのか、区別することができます。
なぜ「ハリー・ポッター」は「ハリポタ」になるのか
くわしくは、『新語はこうして作られる〈もっと知りたい!日本語〉』(窪薗晴夫/岩波書店)に任せます。ここでは、かいつまんで書いてきます。
では、なぜ「ハリー・ポッター」が「ハリポタ」になるのか。
まず第1に略語では、のばす音(ー)は嫌われます。「パーソナルコンピュータ」が「パソコン」に略される。このとき、「パ
(ー)
ソ(ナル)コン(ピュータ)」と、ワザワザ(2音目の)のばす音
(ー)
を飛びこえて、3文字目の「ソ」が省略のときに使われる。のばす音
(ー)
が嫌われている証拠です。こういったものには、ほかには「メール友達」→「メル友」もあてはまります。
第2に、拗音「ッ」は略語を作るときになくなってしまうことが多くあります。「ネットスケープ・ナビゲーター」は、「ネスケ」と略されます。このとき、「ネ(ット)スケ(ープ)」として、「ネッスケ」でもいいはずです。でも実際には「ネスケ」です。拗音「ッ」も、略語には嫌われています。
上の方に、日本語の略語は4拍になることが多いと書きました。「ネスケ」という省略はその原則を破ってまで、3拍の「ネスケ」を採用しているのです。促音「ッ」を使いたくないという強い意志を、日本語という言語に感じます。
今まで書いてきたように「4拍」で、のばす音「ー」拗音「ッ」は使わない。こういったことを考えると、「ハリポタ」というものが略語になるのがいちばん落ちつくところになります。「ハリー・ポッター」についてこの3つの条件を当てはめる。すると、「ハリポタ」という略語しか作ることができないのです。
複合語短縮
複合語縮約
『新語はこうして作られる〈もっと知りたい!日本語〉』(窪薗晴夫/岩波書店)
「複合語短縮」について、日本語にあるいろいろな例をあげながら説明してあります。同じ著者の書いた『ネーミングの言語学?ハリー・ポッターからドラゴンボールまで?〈開拓社 言語・文化選書8〉』(窪薗晴夫/開拓社)も合わせてご参照ください。
関連するページ
複合語
:複合語短縮の説明にも出てくる「複合語」そのものの説明
混成語・かばん語
:語句の一部分が組み合わさって、1つのことばをつくる
そのた
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