TOPページ
外国語混用
関連レトリック
外国語混用
外国語混用
がいここうごこんよう
barbairusm
ロキ「密室のキーは この本棚の裏にある!
ヤミノくん 動かしてみてくれる」
ヤミノ「むっ……! なんとか 動かせそーですっ」
(ズズ…)
まゆら?「
Open Sesame!
」
--『魔探偵ロキ』2巻27ページ(木下さくら/エニックス ガンガンコミックス)
外国語混用
とは、日本語で書かれている文の中で、いきなり外国語が出てくるというレトリックです。つまり、文のなかに「外国語っぽい」言葉が登場するというものです。
変化の少ない単調な文に、メリハリをつける
文というのは、滑るように流れているだけでは、退屈になってしまうことです。なにか、インパクトのあることばが文の中に入っていると、文にメリハリがつきます。このときに役に立つのが、「外国語混用」です。
:メリハリ、リズム、単調でない、単純でない、一本調子でない、平板でない
間違った日本語を話す登場人物に、おもしろおかしく話をさせる
中途半端に間違っている日本語を、登場人物(外国人)に話をさせる。そのことで、ユーモラスでおもしろいシーンをつくることができます。
:滑稽、おもしろい、おかしい、ユーモラス、コミカル
日本語の単語を、外国語の単語に置きかえる
日本語の単語を、対応する外国語におきかえる。あたり前だといわれれば、そのとおりです。たしかに、英語の単語に置きかえるのはカンタンです。けれども、スペイン語とかロシア語とかを辞書なしで翻訳するのは、難しいのではないかと思います。
日本語の文を、外国語の文に置きかえる。
これは、
を文のレベルにしたものです。ただ、これは単純に
を広く当てはめただけではありません。というのは、文を作るには文法にしたがって作る必要があるからです。
外国語を濫用しすぎるのは、よくない
原則としては、外国語ではなく日本語で話をすすめるものです。つまり、外国語が登場するのは、例外的な場合に限ります。
引用は『魔探偵ロキ』2巻。
殺人の調査を依頼された、魔探偵のロキとヤミノ。
一見すると殺人現場は密室のように思われた。しかしロキは、大きな本棚の向こうに謎を解くカギがあるとにらむ。ヤミノにお願いして、大きな本棚を動かしてみると…。
まさに「隠し通路」となっている四角い穴を発見。その時の言葉が、
Open Sesame!
というもの。これは、日本語で言い直せば「開けゴマ!」という意味です(「Sesame」というのは、黒ゴマとか白ゴマとかがあってお赤飯に振りかけたりする、食べ物の「ゴマ」のことです)。
密室殺人のトリックを解くカギが、ロキの予言どおり見つかったことを表しています。
残念ながら、この場面で
Open Sesame!
を言った人が誰なのかは、はっきりとは分かりません。それは、ふき出しの近くに人物が誰も描かれていないからです。
ですが、この「隠し通路」が発見された現場にいたのは、「ロキ」「ヤミノ」「まゆら」の3人です。そのことから推測すると、おそらく言ったのは「まゆら」だと思います。ですので上には、「まゆら?」と書いておきました。
しかし、いずれにしても、日本語で会話をしていた中で、急に英語を使われています。ここが「外国語混用」にあたります。
外国語混用の作りかた
細かいことを書くけれど。
じつは、この「外国語混用」には2つのパターンがあります。たんに、「外国語っぽい」とはいっても。よく見てみると、2つのパターンがあるというわけです。
なので、その2つをくわしく書いておきます。
「外国語のマネ」だと分かるばあい
ライナス「
ハジメマシテ ミーは
はるばるアメリカ ニューヨークから
やって来ましタ!
ライナス・キングと 言いマ-ス
憧れのジャパンの地で
ハイスクールに 通えるコト
嬉しく思うデス ひとつ
ヨロシクー☆ ベイベーっ」
ゆう紀(…変だ)
1つめのパターン。
だれにでも、「外国語のマネ」だと分かるばあい。つまり、あくまで「外国語っぽい話しかたをしている」ことがハッキリとわかるばあい。
ようするに。
タレントの「ルー大柴」のしゃべりかた、みたいなものです。あの、なんともいえない独特な話しっぷりを、「英語」だと思う人はいないはずです。
どうも、あれは「ルー語」というネーミングまであるそうで。やっぱり、どう考えても「英語」じゃありません。
でも元ネタは、あくまで「英語」です。なので、「英語っぽい」という言いかたはできるわけです。
ま。そんなわけで。
「外国語っぽいだけで、ぜんぜん外国語じゃない」というもの。これが、「外国語混用」の1つ目のパターンとなります。
そして、その効果は。もうお分かりのように、「おもしろい」「滑稽」ということになります。
また、時には。
その外国語を「あざける」ようなニュアンスが出てくるということもあります。
右の引用は、『セツリ SINNER'S AMBITION』1巻から。
主人公は、ゆう紀。
「ゆう紀」は、ある日とつぜん「操力者」として目ざめる。そして「ゆう紀」は、彼女がもっているチカラを警察のために使っていくことにする。
??とかいった事情は、引用したトコロとは関係がないので、省略。
いちばんのポイントは、この「ライナス」という少年の自己紹介。その自己紹介に使われている言いまわしです。
ここでは「外国語混用」が、あますところなく使われています。たしかに、英語と日本語とがミックスしたものです。しかし、
「もし現実に、英語をいままで使っていたヒトが、日本語で自己紹介する」
のだとすれば。このような話しかたには、ならないはずです。それは、どうしてかというと、
名詞については、英語で使う単語を日本語にするだけだから、カンタンに話すことができる。
いままで英語を使ってきたヒトが困るのは、助動詞・助詞・活用変化といった文法上のルール。
それと、単語どうしを組みあわせて、文法にもとづいた文を作りあげること。
という法則があるからです。そういったわけで、この自己紹介は「英語のマネ」だと分かるばあいといえます。
ちゃんとした「外国語」を使おうとしているばあい
もう1つのパターン。
ちゃんと、「外国語」を使おうとしているばあい。ようするに、できるだけ「外国語」を正しい「外国語」のまま利用しようとしているばあい。こっちのほうも、「外国語混用」に当たります。
たとえば。
コミックよりは、アニメのほうが有名なのですが。
「魔法少女リリカルなのは」というアニメシリーズが、あります。
この「魔法少女リリカルなのは」には、「杖」が出てきます。あの「杖」って、正式には何ていうの? 「デバイス」でいいの? よく分からん。まあ、いいや。でまあ、その「杖」が英語やらドイツ語やら、しゃべる。「杖」が会話をするという設定は「外国語混用」とは関係がなくて、しゃべっているのが英語とかドイツ語だとかいうことが、「外国語混用」となります。
そして、この「杖(デバイス)」たちの話す英語やドイツ語は、おそらく正しいのだと思います。もし問題点をあげるとするなら、この「杖(デバイス)」は、ハッキリ・キッチリと話しすぎています。たとえるならば、「学校の授業でつかわれる、英語やドイツ語のカセットテープ」のような。つまり、あまりに「正確すぎる」しゃべりかたではあります。ですがそれは「杖(デバイス)」が話すということで、わざわざ「機械的な」「無機質な」に演技をしているとも考えられます。
どちらにしろ。「杖(デバイス)」は、ちゃんとした「外国語」を使っています。
というふうに書くと、ふつうに考えたならば。ちゃんとした「外国語」を使っているパターンのほうが、多いのではないか。つまり、上に書いたような「ルー大柴風」のパターンが例外。あくまで、ちゃんとした正しい「外国語」を使おうとしているほうが、ふつうだ。…一見すると、そのように思えそうです。
なのですが。
実際のところ。こんなふうに「正しい外国語を使おうとして書く」というパターンは、かなり珍しいです。
その理由としては。いろいろなことが考えられます。
まず。
あまり効果が見られない、ということがあります。たしかに、正確な外国語を書くことによって、リアリティーのある外国の様子を写しとることができます。なのですが反対にいうと、「それくらいしか効果が考えられない」ということでもあります。
したがって、あまり正しい外国語を使ったをしても、効き目があるということが少ないのです。
なのに。
落ち度のない外国語を使うというのは、とても難しいことです。その「外国語」を話して日ごろ暮らしている人たちに聞いてもらって、「ちょっとヘンだ」と思われることのないように書くというのは、たいへんなことです。
さっき書いた「魔法少女リリカルなのは」に出てくる「杖(?)」たち。彼らは、しっかりとした英語とドイツ語を話している、…ように聞こえる。
とは、いうものの。
英語&ドイツ語がペラペラしゃべることのできる、そんなアニメ視聴者ばかりじゃない。私(サイト作成者)のように、日本語すらマトモに使いこなせない人だって、アニメを観ている。まして、英語やらドイツ語やらの正しさを判断できるわけがない。
とすると。
そんなに正確な外国語を書かなければならない、というニーズがなさそうだとも思えてくる。
「魔法先生ネギま!」(赤松健/講談社 講談社コミックス)の「ネギ先生」は、魔法をつかいます。そして、その魔法の呪文は、ほぼラテン語です。ラテン語を、スラスラと唱えます。そして、そのラテン語は「正しいものらしい」です。
そして、「ウィキペディア」には。「
魔法先生ネギま!の魔法・技
」という、独立したページまで用意されたうえで、こと細かに解説されています。
しかし。
いくら「正しいものらしい」ということを、「ウィキペディア」が説明していたとしても。それを裏づける知識が、まるでない。果たして、本当に「正しいもの」なのかを知るすべがない。そして、そうである以上、悲しいことながら。どんなに「正しいもの」であったとしても、せっかく「正しいもの」にした苦労が、ぜんぜん伝わってこない。
つまり、それは。
いくら「正しい外国語」を作品のなかで使ったとしても、あまり効果が期待できないということです。
そんなわけで。
そこそこ「外国語っぽい」かんじが出ていれば、それでいいや。とまあ、そうなるわけです。
とはいうものの、見つけてしまった外国語の間違いは気になる
美波「ほら吉井 アンタも来るの!」
吉井「へーい」
美波「返事は一回! ……一度
Das Brechen
ええと、日本語だと…」
ムッツリーニ「
調教。
」
美波「そう! 調教の必要がありそうね」
吉井「せめて教育とか指導って 言ってくれない?」
美波「じゃあ中間をとって
Zhtigung…
確か
折檻?
」
とはいうものの。
もしも間違いを見つけてしまったら、それはそれで気になるものです。
右のイラストは、『バカとテストと召喚獣』。
説明をするのに必要な点だけを書いておくことにします。
主人公は、吉井。この吉井は、コミックのタイトルが『バカとテストと召喚獣』となっていることから分かります。バカです。
そして、このシーンで登場しているのが、美波。ドイツからの帰国子女なので、やや日本語が苦手。
そんな美波のドイツ語なのです。けれど残念なことに、つづりが間違っています。
誤×
正○
調教:
Brechen(*1)
Abrichten
折檻:
Zhtigung(*2)
Zchtigung
*1:Brechenは、別の意味の単語
*2:Zhtigungは、存在しない単語
まあたしかに、このくらいの間違いはよくあります。
けれども私(サイト作成者)は、大学の一般教養でドイツ語を選択しました。その知識からは、美波が話しているその単語は「なんかおかしい」「違うのではないか」という感覚になるのです。
外国語混用・外国語濫用
蛮語使用・バーバリズム
語法違反・異国語法・外国風発音
『日本語の文体・レトリック辞典』(中村明/東京堂出版)
「外国語混用」に、わりと多くのページ数をさいている本。例文がいくつもあがっているので、読みやすい本でもあります。
関連するページ
字装法
:ふつうならば漢字で書くところをワザと「ひらがな」とか「カタカナ」で書くようなレトリック
添義法
:漢字本来の読みかたとは違ったフリガナをふるレトリック
そのた
●言いまちがいに関係あるもの :
マラプロピズム
●外国語に関係があるもの :
人工言語
-
直訳体
-
濫喩
[ためにし作ってみた] :
おすとらんだむ~紹介している220種類のレトリックを、ランダムで選んでページにジャンプします。
サイト全部のトップ