「対照法・対句」のくわしい定義
- 「対照法・対句」は、「文の形式」と「使われる言 葉」を、ともに対比の関係にするレトリックです。つまり、
-
というものが、「対照法・対句」となります。
ですが、『広辞苑』(岩波書 店)が書いているように。多く の場合には3つ目の条件として、
-
を加えます。この「A.」から 「C.」までが全部そろってい るものを「対照法・対句」とし ています。
ですのでこのページでも、上に 書いた「A.」から「C.」ま でを満たしているものを「対照法・対句」と呼んでいくことに します。
「対照法」に近いレトリック用語
- 「対照法・対句」に近 いレトリック用語をならべてみ ると、次のようになります。
- 倒置反復法:語順が 「AB−BA」となっているもの。完全に語順が入れかわって いる。
- 交差配語法
:語順が「AB−B’A’」と なっているもの。不完全だけれ ども語順が入れかわっている。
- 同形節反復:同じ長さの文がくり返されるレトリック (「平行法」に近い)
- 平行法:同じパターンの文がくり返されるレトリック (「同形節反復」に近い)
- 対偶法・対置法:
- 逆対句:「倒置反復法」と「対句」 を組み合わせたようなレトリック
- 抑揚法:
広い意味での「対照法」と狭い意 味の「対照法」との関係
- この「対照法」には、 「広い意味での対照法」と「狭 い意味での対照法」という、2 つの種類があります。
広い意味での「対照法」は、こ とばの長さについて考えます。 つまり、言葉の長さが対称であ ることに注目するのが、広い意 味での「対照法」です。
このレトリックには、「同形節反復」や「平行法」などが当てはまります。
これにたいして、狭い意味での 「対照法」という用語は、言葉の内容が対称になっていること をいいます。狭い意味での「対照法」は、ことばの意味が対称 であることに着目してものとな ります。
「対照法・対句」の説得力
- 「対句」は、漢詩から 取り入れられたレトリックです。が、こんにち日本で読み書きするときには、たぶん漢文を使う人もいない。韻文を使う人もいない。…漢詩をつくろうとしているのでなければ。
といったわけで。
現代の日本で、この「対句」が 完全なカタチであらわれること は、ほとんどありません。
ただし例外として。つぎのよう なばあいには、よく使われるこ とがあります。
「ことわざ」などで使われる「対照法・対句」の例
- この「対照法・対句」 は表現が印象的で、説得力をもつものになります。そのため、 「成句」や「警句」や「ことわざ」な どにも多く使われます。たとえ ば、
- 「聞いて極楽、見て地獄」
- 「帯に短し、たすきに長し」
- 「遠くの親戚より、近くの他人」
みたいに、いろいろあります。
なぜ。このような「慣用句」と してフレーズが決まっているモノであれば、逆に多くのものがあるのか。
それは、
- 「ゴロがいい」ので使いやすい
- 「ことばの意味やカタチが並行している」ので、感覚 的に受け入れやすい
といった理由があるからだと思 われます。
「お役所のスローガン」のようなもの
- もう1つの例として。 「お役所のスローガン」とか 「標語」といったものには、この「対句」が登場します。
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といったかんじのものが、いろいろと作られています。
なぜ、「お役所」がスローガンを作ると「対照法・対句」が多 いのか。それは、ちょっと分か りません。
でも。どうしたことか、「対照法・対句」を使っているくせに 「パンチの弱い」スローガンを 発表するのは、「お役所」なのです。