英語で、「短剣」だとか「短刀」といった意味をもつ単語です。つづりを書けば、「dagger」です。ちょっと前に、秋葉原で連続殺傷事件がありました。あの犯人が持っていたのが、ダガーナイフ。つまり、「ダガー」です。
なのですが、とくに「印刷業界」では。
「ダガー」といえば、「†」のことをいいます。とくに、「参照してください」ということを示すために使われたりします。そういったことはともかくとして、この「†」という記号(約物)を「ダガー」と呼びます。そしてこの記号(約物)は、「短い剣」をかたどったものです。
しかし。
この、『紳士同盟†(クロス)』というコミック。この「ダガー」にたいして、「クロス」という意味があてられている。というよりもむしろ、「クロス」というルビをふった記号(約物)が、「ダガー」になっている。
そのため。ものすごく、違和感があるのです。
たしかに。
単行本の表紙につけられている「タイトルロゴ」は、どうみても「十字架」です。まちがいなく、「十字架」です。なので、「クロス」という読みかたをするのは、ごくあたりまえの自然なものです。
しかしながら。

「扉」。——本を開いてすぐの、タイトルが書いてあるページのことです。
「奥付」。——本のいちばん最後のほうにある、出版社とか著作者とか©マークとかが書いてあるページのことです。
そこを見てみると。
そこには、たしかに「紳士同盟†」と書いてあります。このサイトを見ているかたの多くは、たぶんブラウザが「ゴシック体→
」での表示になっているので、すこし分かりにくいかもしれません。でも、このコミックは「明朝体→
」で印刷されています。ですので、この記号(約物)が「ダガー」だということは、疑うべくもありません。
しかし。
「†」=「ダガー」=「短剣」。
「クロス」=「十字架」。 (「×」みたいな「交差」についても「クロス」と呼ぶけれども。)
この2つは、違うものだと思うのです。
なんだか。
やっぱり、「マンガ家さん」と「DTPオペさん」とのあいだには、深くて果てしないミゾがあるみたいです。
もっとも。
「†(ダガー)」は、そのかたちが「十字架」に似ています。そのことからの連想で、「人が亡くなった年」とかの前に「†」を記号(約物)つけることもあります。また、「もはや今は、使う人がいなくなってしまった言語」という意味で、この「†」をつけることもあります。このあたりについて、くわしくは「ウィキペディア」にある「短剣符」のページも、ご覧ください。
そういうわけで。
「†(ダガー)」を使うということが、「明らかな間違い」だとは言いづらいのは、たしかです。けれども、やっぱり違和感があるんだよなあ。
まあ、そうはいっても。
「†」でなければ、どの記号(約物)にすればよいかというのも難しいです。どうも、「十字架」をあらわすような、うまい記号(約物)がないのです。
「+」(プラス:計算記号)、「┼」(ケイ線の十字記号)、「十」(漢数字の10)。…やっぱり、どれも違います。ぜんぜん違います。そもそも、「漢数字の10」は記号(約物)ではありません。
ですが。
残念ながら、「十字架」をあらわすような記号(約物)は、そもそも存在しないのです。シフトJISコードをつかって、パソコンで表示できるものとしては。ですので、「†(ダガー)」ではダメだといわれても、ほかに打つ手がないのです。
まあ、もっとも。
Unicodeをつかえば、「十字架」を取りあつかうこともできます。たとえば、「✝」だとか「✚」といったあたりは「十字架」をあらわすためのものです。けれども、どうも印刷現場でUnicodeを使って組版をしているという感じはしません。
ただ。
私(サイト作成者)は、DTPの現場から遠くなってしまっています。ひとむかし前のことはともかく、いま現在どのくらいUninodeが広まっているかだとかいった新しい情報は、知る手段がありません。
最近は、OpenTypeフォントというものがある。OpenTypeフォントを使えば、Unicodeに対応しているはず。DTPでも、OpenTypeフォントへの乗りかえが始まっている、らしい。ただ。じゃあ、いったいどれくらい進んでいるかということは、よく知らない。
なので。
ほんとうのDTPオペさんが、このページを見たら。「なんだかヘンなことを語っているなあ」と思うかもしれません。そのあたりは、DTPを仕事をしているわけではない人間が作っているサイトでの書きこみなので、カンベンしてください。
…そういえば。「約物」っていうのも、「印刷業界の用語」なのか…。