過精密:ふつう考えられないほど細かく写しとるというもの
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過精密 かせいみつ acribology


「すなぼし」『ひとひら よしづきくみち作品集』48ページ所収(よしづきくみち/ジャイブ CR COMICS)
  • 姫織(?)「まだ人類には発見されて
  • いない法則なんですが
  • ある特定の条件が揃うと
  • 人の意識は現状の物理より
  • 大きく優先されて現時空に
  • 減少されるのです
  • これを『意識量保存の法則』
  • といいます」
  • 京太「……ある特定の条件って?」
  • 姫織(?)「えーっと 生後
  • 15万9432時間49分
  • を経たときに
  • 自分が壊した物を想って
  • 涙を流すという--」
  • 京太「 ……これ絶対夢でしょ?」
  • 姫織(?)「 チガイマス」
-「すなぼし」『ひとひら よしづきくみち作品集』48ページ所収(よしづきくみち/ジャイブ CR COMICS)
  • 定義重要度1
  • 過精密は、ふつう考えられないほど細かいところまで写しとるというものです。


  • 効果

  • 効果1遊びの効果がある

  • 「やたらと」細かい数をつかう。そのばあい、人間は「何かヘンなことを言われた」という感じをもちます。ですが、「やたらと」細かいというレベルを超えて、「ありえないほど」細かい数を使われたら。そのばあい、「あ、この人は冗談を言っているんだな」と考えるはずです。そうやって、「書き手=話し手」もしくは「読み手=聞き手」が両方とも「それはヘンだ」という気持ちをもつこと。それが「過精密」です。このばあいには、ことばの遊びを目ざしているものになります。
  • キーワード:ことば遊び、言語遊戯


  • 効果2笑いをよぶ

  • ことばの使い手と受け手とが、「冗談だ」という気持ちを一緒に感じたとき。いいかえれば、両者ともが「遊びとしてことばを使っている」という思いをもったとき。そこには「笑い」の効果が生まれてきます。
  • キーワード:笑い、笑わせる

  • 使い方
  • 使い方1「ありえないほど」細かい言いまわしをする

  • 人が「数」を伝えるとき。それは厳密ではないことも、たくさんあります。お米を買うときに「コメを○○粒買います」というのは、明らかに現実ばなれしています。ですが、そういった「ありえないほど」細かい言いまわしをすることがあります。それが、「過精密」です。
  • キーワード:細かい、細やか、微少、微細、こと細か、詳細、精細、子細、詳密、厳密、精密、緻密

  • 注意

  • 注意1中途半端では効き目がない

  • 「過精密」は、常識外れの現実にあり得ない言いまわしになってなければなりません。というのは、もしも受け手の側で「本気で言っている」と思われたら、「過精密」は失敗になってしまうからです。つまり、「笑いの効果を狙っている」ということが分かってもらえないことになってしまうからです。

  • 例文を見る)
  • 引用は、「すなぼし」からです。(『ひとひら よしづきくみち作品集』所収)

    主人公は、京太。

    京太は、2人で天文部の活動をしていた。もう1人の部員は、姫織(ひおり)という女の子。

    …と書いたんだけれども。この短編では、1ページ目から「廃部になった」ということが語られる。なぜかというと、姫織(ひおり)が天文部の活動中に、天文台から転落して死んでしまったから。

    それから。京太は、姫織(ひおり)の使っていた双眼鏡で、天体観測をするようになった。つまり双眼鏡が、「かたみ」のような役を果たしていたというわけ。

    そのように、1人になりながらも天体観測を続けていた。だけれども京太は、ある日「その双眼鏡」を落としてしまった。双眼鏡は、姫織(ひおり)との思い出をつなぐ、「かたみ」のようなものだったはず。なので当然ながら、ひどく悲しんだ。

    すると、次の朝。京太の目の前に、姫織(ひおり)だとしか思えないヒトがあらわれる。ただし、「双眼鏡」をかけているけれども。

    で、引用のシーン。姫織(ひおり)っぽい女の子は、つぎのように語る。
    えーっと 生後15万9432時間49分
    を経たときに
    自分が壊した物を想って

    だけれども。

    こんな「15万9432時間49分」なんていうのは、あまりに細かすぎるのです。つまり、まるで現実感がない。

    そう。たしかに現実感がない。テキトーな数を言ったとしか思えない。だけれども、その「現実感のなさ」が、「過精密」を生みだすことになるのです。

    テキトーに言ったに過ぎないと、京太は思う。本の読者も、そのように考える。それでこそ、「過精密」となるのです。

    なお、この場面では。姫織(ひおり)が現れたことについては、ホントのことを言わない。もしくは、言うことができない。そのため「過精密」を使うことで、言い逃れていると考えることもできます。


  • レトリックを深く知る

  • 深く知る1「15万9432時間49分」という言いまわしについて
  • 引用したシーンで使われている「時間」。それは、15万9432時間49分というものでした。

    この時間を、もうすこし分かりやすくしてみる。すると、
    18年73日49分
    (うるう年は考えに含めない) となりました。

    で。
    ここに書いておきたいのは、15万9432時間49分という言いまわしのほうが、ずっと「ウソっぽい」ということです。「15万9432時間49分」と「18年73日49分」とは、同じ時間の長さをあらわしているハズです。なのにもかかわらず、「15万9432時間49分」のほうが、ウサンくさい。

    ですが。
    そういった、「ウサンくさい」という感じをすることが。この「過精密」が成功するかどうかの、大きな基準となるわけです。話し相手に「真剣に言っているのではない」ということが伝わらないかぎり、うまく「過精密」が成りたたないのです。

  • レトリックの呼び方
  • 呼び方5
  • 過精密

  • 参考資料
  • ●『レトリック事典』(佐藤信夫[企画・構成]、佐々木健一[監修・この項目の執筆担当]/大修館書店)
  • 「過精密」について、かなりの説明が書いてあります。これほど細かく書いてある本は、ほかに見たことがありません。…というか困ったことに、「過精密」とか「acribology」というレトリック用語は、googleで検索しても出てこないのです。出てきたのは、ウチのサイトのほか2から3件というところでしょう。なので、この本は「過精密」の解説をしてある文献として外すことのできないものです。
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